高校1年の時だったと思う、英語の成績が悪くて困っていた。
やる気がなくて困ったでのではない、授業もまじめに聞いているし、復習もしている。しかし成績が悪いのだ。それでどうしたらよいのか、勉強の方法のようなものを知りたいと思い、英語の担当教師を訪ねた。先生は大学を卒業したばかりで学校の近くに下宿しておられた。寒い冬の夜だったが、暖房器具はなく、机には分厚い英語の原書が開かれており勉強中だったことがわかった。「どのように勉強したらよいか」という質問に、先生はこう答えられた。「君だけではなく、ほとんどがそうだが、英語の学習は山の頂上をめざして登るようなものなのに、山のまわりをいつまでもグルグルと回っていて、いっこうに上に登ろうとしない。」私は、こんな参考書を使うといいとか、問題集を何回繰り返すといいとか、そんな答えを想像していたので、具体的でないその答えにはまいった。ただうなずいて帰るしかなかった。ただもうひとつちょっとおもしろい話をしてくださった。「クラウド・ブリストルという人の書いた本がある。その本には”願いは心に描き続けることでいつか現実になる”という内容が書かれている。君の願いを毎晩、眠る前に具体的な映像として思い描きなさい。」これはさっそく実行できた。まず英語の成績が上がっていくことを眠る前に思い描いた。
　その本は大学に合格したあと、東京の神田にある古本店で偶然に見つけた。「精神力を活かす」というタイトルで、読んでみてわかったのは、潜在意識に働きかけ、自己暗示の状態を作り出すというものだ。ほんとうにこうなりたいという願いを心に描くことで、意識しなくてもそれを達成しようという方向に自分の力が自然と向かうようになる。そんなことが書かれていた。前述の英語教師は私が高校3年の時に高校の先生を辞められ、東北大学の大学院に進み、現在は関西の大学の外国語学部教授である。