防災訓練に参加した。前回の訓練は3年前である。今年は小学校の生徒たちといっしょに行われた。実際に大地震が起こったと想定しての訓練だが、やはり訓練で臨場感を出すのはむずかしいようだ。マイクで話すリーダーの言葉を聞いていても、なんとも弱々しい。運動場には消防車、給水車、5箇所ほどのテントが張られ、災害が発生した時の対処方法を具体的に体験する工夫がされていた。給水車では実際に紙コップで給水車からの水を飲んだり、２本の竹の棒と毛布で担架を作り負傷者に見立てた人を乗せたりした。毛布の巻き方にコツがあり、それを知っていないと担架は作れない。また別のテントではガス会社の担当者が、従来の鉄製のガス配管ではなくPE管というポリエチレン製のガス管の説明をした。地震対策のための新しい技術である。小学生は地区ごとに集まりこうした災害対策の話を聞いていた。地震体験の部屋があり、震度７くらいまでを体験できる。担当の係員が「それでは今から地震が来ます。今から来るという地震はありませんが・・」と冗談も交えて熱心に体験者を誘導していた。　　　私は「伊勢湾台風」の突風で家が全壊した経験がある。当時、小学生だったが、全壊するその瞬間や、妹と父母と、倒壊した家からどのように脱出して避難したか、今でも克明に記憶している。台風の去ったあくる日は快晴で、役場からの見舞い品である３枚の毛布にくるまって、残った床の上で過ごした夜など、消すことのできない記憶だ。防災訓練は被災後の復旧のありかたを示すもので、自然災害を防ぐことは難しい。災害は一瞬である。その一瞬をまず何としてでも生き延びることである。