江戸時代の藩校では四書五経の素読と習字を中心とした教育が行われた。現在でもいろんなサークル活動で論語の素読が行われているようだ。有名な例では、ノーベル賞の湯川秀樹博士が小学校入学前にやっていたことが知られている。素読というのは、主に漢文で使われる言葉で、意味はさておき、とにかく文字を声に出して読むことをいう。結果として記憶ができる。現在の中学3年生の国語の教科書で「学びて時にこれを習う」というところで漢文を学習する。その中に、[子曰、剛毅木訥、近仁]（しいわく、ごうきぼくとつ、じんにちかし）という文がある。「意志が強くて飾りけがなく、軽々しくおしゃべりなどをしない人、そういう人こそ他人を思いやる気持ちを持つ理想的な人物である）という意味だ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　私の母は、「馬鹿はよくしゃべる」と言っていた。母が漢文の素読をしていて、この意味を理解してのことかは定かではないが、こちらのほうはわかりやすい。学習塾を始めたころ、特に小学生のような子供の場合、教室がざわついた時に、「静かにしなさい！」と大声をあげたこともあった。今ではまずそんなことはしない。「ボクの母が言っていたけどね、馬鹿はよくしゃべるらしいよ」と言うと、静けさをとりもどす。子供はじっとしていない、自己表現をしたいためにしゃべる、これはごく自然なことであるが、どこかで躾をしないと学習のレールには乗れない。　さて、勉強するのに必要なのは、まず聞く力、次が覚えること、理解することだ。素読は音読しているから他人とおしゃべりはできない。さらに暗記に脳は集中する。それが習慣になる。習慣は第二の天性と言われている。もっと素読、暗誦を学習の中に取り入れると学力は伸びると思う。あなたは英語の教科書を声を出して読んでいますか。社会は、国語はどうですか。