新しい年が明け、1月は成人式があった。だいぶ昔だが、私の成人式はというと、当時、就職や進学でほとんどが地元を離れていたので、郷里の実家に帰省する正月を利用して成人式が行われた。その時、何か記念にと思って、「人生名言集」という本を買った。今でも手元にあって折々に開いて読むことがある。『友情・愛・社会・教養・生活・美・神・自然』といった項目のそれぞれが又細かい項目に分かれている。　名言集というのは、「ああ、そうか」とか「なるほど」と思わせる数行の短文だ。この名言集の「教養」の中に「教育」という項目がある。その中に「子を養ひて教へざるは父のあやまちなり、教へて導くことを厳ならざるは師の怠なり、父教へ、師厳しくして、学問なることなきは子の罪なり」（司馬温公）」というのがある。　教育はまず家庭で、次が教師が厳しく教える。その両方ががんばっても子供がちゃんとならないのは、努力不足の子供がだめだ、と手厳しい。
　さてこの司馬温公という人は11世紀の中国の学者で、こんな話が残っている。温公が子供のころ、友達と遊んでいて、1人が大きな水瓶に落ちた。水瓶は父が大切にしているものだった。仲間たちはおろおろして何もしなかった。温公は、石で水瓶を割って友達を助けた。大切な瓶を割ったので叱られることを覚悟したが、父親はこれをほめて、「どんな物よりも、人の生命のほうがまさる」ことを教えた。他にも「植物は栽培により成育し、人は教育により人となる（ルソー）」とか「一国民の教育にその国の運命がかかっている（ディズレリ）」など、名言集は成長期の若者にも、人生の経験豊富な高齢者にも、なるほどと思わせる言葉の宝庫である。