《夏休みなのに正男（9歳）は元気がない。たった一人の家族のおばあちゃんは仕事が忙しく、遊びに連れて行ってくれる人もいないからだ。そこで遠くで働く母親に会いに行こうと思いつく。
手がかりは一枚の写真と住所だけ。心配した近所のおばさんは暇をもてあます旦那の菊次郎（52歳）に送り届ける様、命令する。二人の旅が始まった・・・。さまざまな人と事件に出会いながら現実の厳しさと人々の優しさに触れていく。・・・》
　これは「菊次郎の夏」という映画作品のあらすじだ。このビデオを夏休みに塾生といっしょに観るのがいつのまにか恒例になっている。実は私の小・中学生のころ、「映画教室」といって一年に何回か町の映画館に行って映画を観るという授業があった。全生徒が行くわけだから映画館に一度には入りきれなくて、グループにわかれて行った。まずスクリーンに「文部省選定」という字幕が出た。作品は素直な心で涙させるものばかりで、こんどこそ泣かないぞ、と構えていてもいつも泣けてしまった。
だからこの授業は苦手だった。おそらく道徳教育、情操教育の一環として行われていたのではないかと思う。
　さて人は相手の目を見れば、元気がないとか、やる気があるとかがすぐにわかるものだ。「菊次郎の夏」では正男の目は、元気がないから始まり、母親が再婚していたことで失意の目になり、大人たちが遊んでくれたり、励ましで、次第に明るく希望に満ちた目になっていく。心の成長だ。塾生たちは鑑賞後、おもしろかった。よかった。と言っている。子供たちの目を輝かせるのは大人の責任である。この映画を観るたびに思う。