「男はつらいよ」という映画がある。お盆、正月にはかならず新作が全国の映画館で放映された大変人気のある映画だ。

その主題歌の中に『どぶに落ちても根のあるやつはいつかは蓮の花と咲く･･･』という一節がある。「どぶ」とは雨水、汚水などが流れる溝のことで、下水道の整備された今日では、まず目にすることはない。そんな環境のわるいどぶに落ちた植物の種でも「根のある」（これは人に例えて、根性というのだろうが、）やる気のあるものは蓮の花のように立派な花を咲かせる。つまりめぐまれない環境でもがんばって成功しようという、応援の歌だと思う。

　さて、最近の新聞のニュースで、学校で使用している教科書がデジタル化されてタブレットで使えるようにする動きがある。具体例として理科では天体の運行のモデルを動画で確認とか、音楽では楽器の音や音声を確認ができるなどがあるようだ。新しい学習環境を提供して学力を向上させようという狙いだと思う。実はだいぶ前に学校にパソコンが導入されて、学習面での効用がいろいろ期待された。しかし現在の使い方を見ると、ネットで調べ物に使う程度にとどまり、さしたる効果が出ているとは思えない。さらに子供たちがパソコンの使い方の基本を熟知したかと言うと、ほとんどできていない。「お金の無駄使い」を表す例えに「どぶにお金を捨てる」というのがある。パソコンがタブレットに変わって、目に見えて学力が上がるのではという期待には注意が必要だ。私も塾での英単語の練習、数式の計算など各教科に知識の定着を目的としてパソコンを利用してきているが、前述の「根のあるやつ」にならなければ、何を与えられてもだめである。