小学3年生の時に、先生が赤インクの万年筆で採点するのを見た。これが万年筆との最初の出会いだった。中学生の時、担任だった英語の先生は、「インクの匂いが好きで教師になろうと思った」と話されたのを記憶している。高校生のころにやっと自分の万年筆を手に入れ、手紙や英語を書く練習に使うようになった。黒い制服の胸のポケットに万年筆をさしておくのが知的なおしゃれだと思っていた時期もある。大学生のころ、難しい数学の問題の解答を万年筆ですらすらと書いていく友達に驚いたことがある。今でも万年筆は好きな筆記用具で、日々の記録を書くのに使っている。ボールペンが出てからは万年筆を使う人が少なくなったようだ。ボールペンは生徒たちが赤色で答えあわせや訂正などに使用している。ノートやテキストの学習には鉛筆やシャープペンシルを使うのが普通だが、夏休みの始まったころから、希望者に私の集めた万年筆を使わせてみた。インクの色はブルー。まず教科書の英文をネイティブの発音で聞き、両開きしたノートの左側に英文を、右側に和訳を書くのである。　　　　　　　　万年筆は書く時にペン先の方向が決まっている。ドイツの小学校では万年筆の使い方を教える授業があるという。最初は使い方にとまどっていたが何とか使えるようだ。書くのに力がいらず疲れない、濃い文字が早く書ける。万年筆で書くと消しゴムは使えない。書き間違えたら、間違えたところに二重線を引き、さっさと次に進む。消しゴムを使いすぎる生徒は、一度、万年筆を使ってみるといい。書く前に良く考えるようになり、集中力も途切れないはずだ。